本年度は、先におおきな日本思想史研究の方法論からの見取りとしてたてた、(1)ドイツ文献学的方法(村岡典嗣)、(2)その延長としての解釈学的方法(和辻哲郎)、(3)現象学的方法の適用(土田杏村)(4)漢学の伝統と西洋の文化史的方法(津田左右吉)(5)マルクス主義唯物論的立場からの思想史方法論(永田広志)という区分そのものを確証する試みをつづけ、ほぼこの区分けで、近代日本の日本思想史研究の潮流を区分できることをたしかめた。これらの方法をそれぞれの流れのなかで位置づけるこころみは、最終年の課題であるが、本年度は、とくに、それらの神話観をさぐるという区分けを横断する視点をたて検討し、その成果を『日本思想史学』等に掲載した。また、漢学の伝統と近代日本の思想史研究との関係という問題に関して、台湾大学の佐藤将之教授を招聘し、共同研究を行うと共に、とくに「中庸研究」と思想史研究というテーマでの、講演会等を開催した。これは研究代表者の知見の不十分な点を補完するための共同作業であると共に、上記(3)の潮流の位置づけという課題に、寄与するものとなった。また、(2)については、和辻倫理学・和辻倫理思想史と「法」という問題視点からの論考、さらに課題全体にかかわる問題の一端を論じた論考をそれぞれ専門誌に掲載した。
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