この1年間にわたしが行うことができたのは、シェリングを中心とする「生気論」に関係する文献の収集と関係する論文の収集であった。それに基づき、わたしはシェリング文献から「生気論」に基づくシェリングの見解の整理を行った。その結果、明らかになったのは、シェリングは基本的に「生気論」の問題を「機械論対生気論」という18世紀の基本的な理解を示しながら、「生気論」に対して批判を行っており、「生気論」に与していないということである。これが第1点である。 第2点としては、1800年前後の「生気論」の流れをフォローすることである。シェリングはとフーフェラント派の理論的対立は、すでに確認していたので、それ以後特に反対派の流れがどこに結びつくかをフォローした。 それによって、わたしは、アンリ・ベルクソン、ハンス・ドリーシュらの、現代に至る「生気論」の流れを汲む潮流を確認し、それとの関係で、「実験医学」の流れが「生気論」と対決する基本的潮流であることを確認した。 だから、今年度の研究から課題として明らかになってきたことは、第1に、シェリングを中心に「生気論対機械論」の枠組みを組み替え、それによって「実験医学」の問題性と連結することが課題となるだろう。第2に、シェリングを中心にした議論の広がりをさらに文献的に確認していくことである。
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