研究概要 |
論文"Reconsidering the fragment of the Brhattika on inseparable connection (avinabhava)"は,クマーリラ研究の基礎となる彼の年代論の研究である。従来は「クマーリラは晩年にダルマキールティ論理学の影響を受けた」というE.Frauwallnerの仮説が有力視されていたが,本論文は,クマーリラは晩年までダルマキールティのことを知らず,またダルマキールティは最初期著作でクマーリラの影響を受けていることを指摘した。論文"Kumarila's Proposidonal Derivation (arthapatd) without Pervasion (vyapti)""はテキストの文脈解釈に必要とされた論理の一端を解明した。インドには独自に発達した論理学の伝統があるが,どの学派でも三段論法的な名辞論理のみに取り組んできた。しかしクマーリラは,一つの個体に関する言明の組み合わせから別の言明を導出するという命題論理の可能性を,名辞論理とは別種の論理として提起したことを本論文で明らかにした。論文""Kumarila's Reevluation of the Sacrifice and the Veda from a Vedanta Perspective""は,クマーリラがテキストの文脈を重視する背景に,彼独自のヴェーダーンタ思想があることを解明した。諸々の儀礼行為を関連付ける行為形式を聖典解釈学で「現実化作用」(bhavana)と言うが,クマーリラは後期著作で,定期祭における現実化作用の目的を,未だ存在しないを祭式怠慢により受けてしまうことの回避から,既に犯して存在する罪障を祭式により無化することへと転換し,さらに非人為のはずのヴェーダにおいて文脈により特定の意図を伝えようとする主体が存在するかという問いに,それは虚空にあらわれた音声テキストという身体に宿る「最高我」(paramatman)であると答えていることを明らかにした。"
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