研究課題
今年度は、『大乗荘厳経論』の偈頌、世親釈、無性釈、安慧釈のうち、第9章(菩提品)、第11章(述求品)、第18章(菩提分品)の膨大なテキストについて、昨年度おおよそ入力を終えていたデータについて、ヴァリアントの確認作業を含め、出版可能な形に整える作業と、その上で偈の番号ごとにサンスクリット本文、チベット語訳、漢訳、無性釈、安慧釈の順に対照テキストを作る作業を行った。本来は気の遠くなる仕事であるが、依頼した大学院生が予想以上に努力をし、ほぼ完成させられる見込みになった。最終年度の早い時期にテキスト部分を完成させ、研究部分を作成する下地とすることになる。ただし、テキスト部分だけですでにおよそ500ページになってしまうのではないかと危惧するくらいの分量である。また、18年秋に来日されたシュミットハウゼン教授(ハンブルク大学名誉教授)と唯識観についての数度にわたる意見交換の結果、近い将来に唯識観についての教授の研究成果と当科研の成果との共同研究を実現することが確認され、教授の未発表の旧論文をはじめとする膨大な知識と、これとはやや考え方や方向性の異なる研究代表者(佐久間)の現時点での研究成果との異同の確認作業に入ることになった。19年秋にハンブルクで共同研究の具体的な作業方針を話し合う予定である。『大乗荘厳経論』という実践理論と教義理論との境を見極めるのに適したテキストを、時代ごとに対照させたテキストを作成したことで、これをベースにして、これまでの学会の唯識観に対する常識的な見方を少しずつ変え、人間の思考の趨勢として歴史的に順当な見方を考察する下地にしてゆきたいと希望している。最後に、今年度の研究成果発表は日本国内の学会や研究論文として佐久間、小野、吉水それぞれに研究論文として発表したことを加えて報告する。
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哲学・思想論集 32
ページ: 130-156
印度学仏教学研究 55・3
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Les Cahiers d'Extreme-Asie 15 (2005), Ecole francaise d'Extreme-Orient, Kyoto
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