研究課題
基盤研究(C)
最終年度に当たる本年度は、昨年までに入力を終えた第3章、第9章、第11章、第18章のうち、入力に携わった大学院生が博士論文に使用する第11章を除き、また研究代表者が論文として発表するために使用した第3章を除いて報告書として提出することができた。第9章と第18章ですでに500頁を超える分量であり、当初期待した以上の成果である。入力が比較的早期に仕上がったこともあり、すでに解読作業に入っている。仏教では重要なテーマである無我論をテーマとする第18章の最後の部分から始めている。別に代表者が五姓格別をテーマとする論文で使用した第3章については別な機会にテキストを公にすることも考えている。さて研究テーマである唯識観が外界を否定するものではなく実践理論であることを解明するに当たり、今回は五姓格別について『鍮伽論』など様々な論書の内容を分析し、中国法相教学の唱えてきた五姓格別がどのよ.うにしてインドで形作られ、玄奘によって純化されたカを辿ることが出来た。その最も重要な論拠となったのは『大乗荘厳経論』の偶、世親釈、無性釈、安慧釈を比較対照したことで、この間に次第に三乗思想と、有種姓・無種姓がリンクされ、玄奘が五姓格別の五つの項目を並列する下地が調ったことが明確に解明された。唯識観がどの時点まで実践理論であったかを特定するのは非常に難しい作業であるが、以前に代表者が研究成果としてあげてきた八識と四智との結合関係の成立過程に加え、今回の五姓格別の成立過程を合わせると、世親が一つのポイントになることが明確になってきたと思う。今回報告書として提出したテキストによって無我論に限らす、実践理論の重要な項目である三十七菩提分などを丹念に辿る基礎が出来たと考えている。この基礎作業のもとに内容の分析を重ね、さらにフィールドワークを加えて研究を進展させたいと思う。
すべて 2008 2007
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)
『哲学・思想論集』 33
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『加藤精一博士古稀記念論集真言密教と日本文化』下巻、東京、ノンブル社
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Toyo Bunko
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