研究課題/領域番号 |
17520045
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
丸井 浩 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (30229603)
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研究分担者 |
手島 勲矢 同志社大学, 大学院・神学研究科, 教授 (80330140)
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キーワード | 宗教伝統 / 科学精神 / 高等批評 / 本文批評 / インド哲学研究 / ニヤーヤ・カリカー / 寛容思想 / ヴェルハウゼン |
研究概要 |
西洋近代をも相対化しつつ自らの重厚な宗教伝統からの脱構築を図る強靭なユダヤ思想を、聖書本文批評と解釈という古典文献学の王道を通じて着実に解明しようとする世界第一線の研究者との緊密な対話を手掛かりとして、宗教聖典の権威論証という文脈に現れるインド的思惟の一特質〈宗教と哲学の交錯〉の解析を目指す本研究企画の最終年度にあたって、まず研究代表者は中心テキストである『ニヤーヤ・マンジャリー』に多くの平行句が見られる『ニヤーヤ・カリカー』が同一著者ジャヤンタの真作か否かの問題を、テキスト本文批判及び宗教聖典の権威問題と絡めて考察し、日本印度学仏教学会学術大会の口頭発表、及び同学会学術雑誌への英語論文寄稿を行なった。他方、研究分担者はスピノザから高等批評の確立への200年と、高等批評からヴェルハウゼンの資料説批判への100年の批判的概観を中心に研究を進めて、その成果は3本の雑誌論文と2回の口頭発表に結実した。これらによって、本文批評を[下等」と位置づけることで起きた本文批評の恣意的二者択一を推進させることになり、結果的には聖書の本文伝統そのものに深刻な亀裂が生じたこと、そしてその本文批評の問題看過のプロセスが逆説的に高等批評を推進させたこと、またそれゆえに、高等批評の結果が現在疑問視されることにもなっていることなどが次第に明らかになってきたことは注目に値する。インド哲学研究との結節点に通じる知見としては、この一連の問題は、近代精神が進化思想をテコにして古い伝統の軽視・棄却・忘却を正当化する「科学」モデルを確立していったことと不可分ではないとの認識に至った。平成20年2月の研究会において分担者は「近代と古典研究:ユダヤ学と聖書学の場合」と題する発表を行い、近代インド哲学研究が抱える西洋近代とインド土着思想の伝統との相克の問題との関係を討議した上で、最終報告書に向けての会合を行った。
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