研究課題
基盤研究(C)
日本のインド哲学研究は、古来の仏教思想文化の伝統を土壌としつつ、古典文献学及びOriental Studyの一形態として西洋近代で生まれた「インド学」を明治以来導入することによって発展してきたが、本研究課題はインド論理学派研究を専門とする研究代表者(M)が、西洋近代の相対化と自民族の宗教伝統からの脱構築をともに経験しつつある強靭なユダヤ思想の第一線研究者手島勲矢氏(T)を研究分担者として迎えて、私たちが学び取った西洋近代的な視点や科学的学問方法は何であり、それがインド思想の内的発展の理解にどのような光をあてたのかという問題を解明するための実験的な第1歩を印すこととなった。具体的な研究成果としては、Mが論文4本と学会発表等5つ、Tが論文4本と主要な学会発表等5つであるが、特筆すべきは日本南アジア学会第19回大会において小パネル「インド的思惟と歴史意識」を企画し、インド研究とは全く違うユダヤ学研究者との対話が、非歴史的と評せられるインド的思惟の内的展開に対する、西洋近代の学問的切り口(文献学と歴史学)の「特殊性」を浮き彫りにし、われわれ自身のインド哲学研究の現状認識を深める大きな機縁となりうることが確認できたことである。聖書解釈史の中で伝統的、内的な聖書理解を棚上げにし、宗教的生の現場の外から、テキスト生成の起源に切り込もうとするヴェルハウゼンの資料説がおこる背景には、理性の力によって古い伝統からの棄却をよしとする科学精神、さらには進化的思考があったのではないかとのTの指摘はその意味でも重要である。このほかMはインド哲学文献の中の宗教聖典の権威論証の分析から、宗教的多元状況の中で他宗教との融和調停をはかるための哲学的理論の展開に注目して、他を自の中に手前味噌的に取り込もうとするインド的「包括主義」の積極的な意味合いを提案した。
すべて 2008 2007 2006 2005 その他
すべて 雑誌論文 (17件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (20件) 図書 (1件)
印度學仏教學研究 56巻3号
ページ: 27-35
共同研究:多民族社会における宗教と文化 No.11
ページ: 3-18
密教文化 No.220
ページ: 38-45
Journal of Indian and Buddhist Studies Vol.56 No.3
Collaborative Projecgt : Religions and Cultures in Multi Ethnic Societies No.11
The Mikkyo Bunka(Journal of Esoteric Buddhism) No.220
『同志社大学21世紀COEプログラム-神教の学際的研究文明の共存と安全保障の視点から研究成果報告書2006年度』 1
ページ: 112-142
The Annual Report 2006 of the 21st COE Project of CISMOR, Doshisha University
印度學仏教學研究 54巻3号
ページ: 33-41
Nyaya-Vasistha: Felicitation Volume of Prof. V. N. Jha 1
ページ: 388-400
スピノザーナ 第7号
ページ: 47-76
Journal of Indian and Buddhist Studies Vol.54 No.3
Nyaya-Vasistha : Felicitation Volume of Prof V. N. Jha
Spinozana, No.7, Spinozana Kyokai
春秋 No.471
ページ: 5-8
CISMORユダヤ学会議 第1号
ページ: 58-78
The 1st CISMOR Conference of Jewish Studies vol. 1