研究課題
法称(七世紀中葉)の主著『知識論決択』第三章(他者の為の推論章)は、現在、ローザンヌ大学のTillemans教授が校訂テキストを作成中である。筆者は同書の第三章のドイツ語訳、および、法称の論理学の分析研究を担当している。翻訳研究のためには、校訂テキストの共有が不可欠である。筆者は、平成19年の夏に、同教授の共同研究者であるHugon博士が滞在するウィーンのオーストリア科学アカデミーに出張し、テキストの同異を検討した。このテキストを基にして、「立論者によって意図された(ista)」事柄が主張命題である、という規定に関する法称の論述を考察した。法称のこの規定の一般論と、この規定に準拠した、他者(チャールヴァーカなど)の疑似命題に対する論破の方法とを、二つの英文論文として発表した。後者の論文では、当時(七世紀)周知となっていたチャールヴァーカの論法-自己の主張を曖昧な形で表現するというトリックを用いて、自己の主張を強引に成立させる論法-に存する矛盾を分析した。この論法はその内容が複雑なため、論理的に批判することは難しいとされてきたが、Dharmottaraの注釈を用いることにより、主張命題の上記の規定に反することを論理的に解明することが可能となった。同書の主張命題の「意図された」という規定の部分についてのドイツ語訳研究については、ウィーンの科学アカデミーにおいて、同研究所所長のKrasser博士と共に、ドイツ語訳文の最終チェックを行った。また、法称の論理学の応用問題として、慈悲の修習の可能性についての仏教論理学派説の理論的分析を行った。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
日本仏教学会年報 72
ページ: 39-50
Indica et Tibetica, Festschrift fur Michael Hahn (Wiener Studien zur Tibetologie und Buddhismuskunde Heft 66)
ページ: 275-288
Pramanakirtih, Papers dedicated to Ernst Steinkellner on the Occasion of His 70th Birthday (Wiener Studien Heft 70)
ページ: 315-344