研究課題
基盤研究(C)
インド思想の歴史的な展開は、諸学派間の論諍に依る所が少なくない。しかし、学派間の哲学的な論争では、立論者が自らの主張を曖昧に表現することによって、自らの主張を強引に成立させる論法が処々に見られる。これらの疑似論証を否定するためには、まず立論者が何を主張しているのかを明確にしなければならない。ここに、或る言明が証明されるべき主張命題となる為には如何なる条件を必要とするのかという問題が生じてくる。仏教においてこの主張命題の定義に本格的に取り組み、論理体系を構築したのは、法称(Dharmakirti ca.600-660)である。本研究においては、主張命題の成立の一条件「立論者に真に意図されたこと(言外の意図)が主張命題である」という条件の意味を考察した。当時、数論学派やチャールヴァーカなどが、主張命題の表現の曖昧さを利用して自らに都合の良い帰結を導く論証を提唱していた。その論証の不合理性は直感的には理解されてはいたが、論証の内容が複雑なために、論理的に解明することの難しい一つの難問とされていた。法称は、立論者の言外に意図したことも主張命題に含まれるという規定を主張命題の定義に含めることにより、その問題が解決する、と説明している。本研究では、法称の主著『知識論決択』の新発見梵文の当該箇所の解読を通して、法称の説示を理論的に分析し、仏教の学匠が、健全な議論を行う為の基盤を如何に構築したのかを明らかにした。更に、教理の分析に仏教論理学的思考を応用した例として、仏教における悲愍の実践が如何に可能となるのかを論じた法称の理論を分析した。
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