本研究の目的は、チベットで新たに発見されたジネーンドラブッディ(ca.710-770)の『プラマーナ・サムッチャヤ・ティーカー』(集量論複注)の梵語写本を解読し、その批判的校訂を作成することにある。その結果、インド論理学に革命的な変化をもたらしたと言っても過言ではない仏教論理学者、ディグナーガ(ca.480-630)の未だ梵語原典が発見されていない主著『プラマーナ・サムッチャヤ自注』(集量論)を出来うる限り復元することが可能となり、ディグナーガの認識論・論理学のより正確な理解を実現できる。 本研究はオーストリア学士院のErnst Steinkellner教授と中国蔵学研究中心との共同プロジェクトの一部であり、既にSteinkellner教授他による『集量論複注』第1章の批判的校訂は昨年北京から出版されている。本研究代表者は、同書の第3章・第4章・第6章の批判的校訂を依頼されているが、平成17年度には、第3章70フォリオのうち約15フォリオの批判的校訂を完成した。 毎月2度、龍谷大学大宮学舎で行う研究会には、研究分担者である筑波大学の小野基講師だけでなく、京都大学の赤松明彦教授、神戸大学の狩野恭教授、龍谷大学名誉教授神子上恵生氏他、多数の参加者を得て、活発な議論を行っている。平成18年1月-3月までは上記の第1章の校訂者の一人である、来日中のHelmut Krasser助教授(オーストリア学士院)が参加され、多くの有益な助言を得た。 テキスト解読により得られた新しい知見は、来年度から徐々に公表していくつもりである。
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