研究概要 |
本研究の目的は、新発見の梵語仏典写本、ディグナーガの『集量論自注』に対するジネーンドラブッディの『複注』第3章・第4章を解読し、批判的校訂本を作成することにある。その結果、未だ梵語原典の写本が発見されていないディグナーガの原著の原文をかなりの程度回収することが可能であり、従来、2種の不十分なチベット語訳でしか研究することができなかったディグナーガの論理学の正確な再現と理解を追求することができる。平成19年度には、第3章のうちディグナーガの自説を述べる部分の解読をほぼ完了した。さらに、ニヤーヤ学派の論理説を取り上げて批判する部分の約半分を解読した。 本年度に読解した箇所で得られた特筆すべき情報は、従来の理解とは異なり、ディグナーガは「帰謬法」を彼の論理学に位置づけて、駆使していることである。 本研究の成果の一部は、2007年6月台湾の国立政治大学で開催された「仏教認識論・論理学ワークショップ」におけるディグナーガに関する3回の講義、10月、カリフォルニア大学バークレー校で開催されたText, Translation, and Transmimsionと題するシンポジウムにおけるディグナーガとダルマキールティの論理学の相違に関する講演、同月スタンフォード大学で行ったディグナーガ諭理学に関する講演で発表してきた。
|