本年度は、まず第一に、公立の小中学校で現在用いられている道徳の副教材、ならびにその指導書を広く収集し、その整理につとめた。そのため47都道府県教育委員会、17都市指定都市教育委員会、24中核都市教育委員会、東京都23区教育委員会に対し、道徳の副教材の使用状況について尋ね、入手可能なものは入手した。その結果、教科書会社作成を含め、300冊ほどの副教材とその指導書を収集した。目下、その整理を行い分析に取り組んでいる。第二に、上越教育大学の得丸定子氏や国士舘大学の鈴木康明氏らが行う、いのち教育の研修会に参加あるいは運営の手伝いをした。この活動の一端は、月刊誌『創文』484号に記した。また、実際に小中学校で道徳の授業展開をしている教諭から聞き取りを行った。そして、大阪教育大学附属平野小学校教諭梶原博氏の協力を仰ぎ、人間の死に係わる道徳教育の実践授業を行った。第三に、道徳に関する研究の読解を進めた。道徳の指導要領に関して分析した、西脇良著『日本人の宗教的自然観』については、その書評を著わした。この書評は、『宗教と社会』第12号2006年(「宗教と社会」学会)掲載される。第四に、宗教性の原理的問題を考察するために、フランス・スピリチュアリスムと西田幾多郎の研究を進めた。前者の成果は、「フランス・スピリチュアリスムと神秘主義」と題し『アルケー』14号(関西哲学会)で発表される。さらに、死生学に関する文献目録を作成した。これは現在出版準備中の『宗教学文献事典』の基礎資料となるものである。第五に、スピリチュアルケア研究会で「いのち教育の現状と課題」と題する研究発表を行い、「宗教と社会」学会第13回学術大会で、テーマセッション「宗教と心理療法の相互内在性-宗教哲学的・思想史的視点から-」のコメンテータをした。後者の概要は、『宗教と社会』第12号に掲載される。
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