本年度は、四年間にわたる研究期間の最終年度にあたるため、研究目的および研究実施計画に基づき、以下の研究活動を行ないつつ、研究の総括を図っていた。まず、文献研究と実地調査の所見により、朝鮮(韓国)における漢訳西学書についての論文をまとめた(下記11参照)。この研究により、主として17-18世紀における漢訳西学書の韓国所蔵およびその影響状況を明らかにした。それから、一昨年、中国北京大学(2007年10月)および上海斯波特大酒店(2007年11月)で、それぞれ「概念の翻訳と生成-『幾何原本』第一巻「界説公理」を中心に-」、「『幾何原本』的成立及其在東亜的伝播-以概念的翻訳與公理思想為中心-」と題する日本語と中国語による口頭報告の原稿を整理し、それぞれ研究報告集および国際シンポジウム論文集の原稿として提出済み、今年内出版の運びである。なお、漢訳西学書の南欧所蔵情況およびその底本調査のため、9月16日-10月2日まで南欧のポルトガル、スペインおよびフランスで研究調査を行なった。その調査成果の一部を 下記学会発表の通り、口頭報告を行なった。なお、当研究調査は不十分ではあるが、その第一段階の所見に基づき、いまも整理中で、七月に島根県立大学で予定されている「東アジア出版文化研究」の研究集会でさらに報告し、年内にその所見を論文化して公表する予定である。 なお、当研究の遂行により、17-18世紀、漢訳西学書の伝播を通して、東アジアに新たなローカルな新知識体系が様々な形で構築され思想的影響を果たしていたことに気づき、当研究のさらなる展開または深化を図るため、目下、そうした新しい研究課題をも視野に入れつつ、鋭意に取り組んでいるところである。これは、本研究の大きな意義だと言えよう。
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