18年度の調査研究は昨年度より学術交流を進めた史跡湯島聖堂・財団法人斯文会にかかわる調査を中心に行い、とくに、明治なって湯島聖堂所蔵資料が移管された浅草文庫についての調査をおこなった。実施計画に基づく調査では東京国立博物館と国立国会図書館に浅草文庫の主たる資料が分蔵されていることから、このことに関しての経緯、記録、所蔵所領の履歴などを確認しつつ、調査を継続した。また、資料の所在や先行する研究論文などの文献については大学図書館を中心に江戸東京博物館、国立国会図書館、東京国立博物館資料室などで調査を進めた。実施計画に従った調査は次第に具体化し、文献資料から浮かび上がった調査先を選出した。当初計画した実地調査の予定では収まらず、調査先を大きく広げ、19年度まで継続しておこなう方針となった。 また、本年度には儒教絵画の目録化をするにあたって、絵画資料の画題について検討した。これをもとに次年度調査の研究テーマとして、「礼拝に関わる絵画」、「古代より儒教が及ぼした影響下の絵画」、「道釈人物に関わる儒教絵画」などについての研究指針を得た。 平成18年度は研究計画の2年次に当たるが、調査成果が充実したため、当初の費目別経費の予定を変えて、調査の成果について、報告書を作成し、科学研究費のデータを広く公開して、研究の方向性とこれからの調査に資する情報収集を行なうこととした。膨大な資料のデータファイルを保管し、文献資料等研究データの蓄積をおこなうため、研究協力者を組織し、調査・報告を行った。これをもとに、江戸前期儒教絵画に関する文献コピーの分類と保管庫を整え、目録化を進めることができた。ただし、写真資料については、公開に関わる条件を満たしていないため。基本データの台帳を作成するにとどめ、ファイル化し、保管した。 その成果は『「江戸前期儒教絵画に関する研究」報告集』に纏めることができた。また、研究代表者が所属する筑波大学附属図書館旧蔵資料(前身校により受け継がれた資料)の調査報告も本研究にかかわる資料報告として集成し、『「江戸前期儒教絵画に関する研究」報告集別冊』に纏めた。
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