本年度は、まず主要な芸術研究を定め、そこでの計測法の明確化のために、資料収集、現地調査、計測法分析などを行った。主要な芸術研究としては、ヴァールブルク、パノフスキー、ヴィントなどのイコノロジーと呼ばれる方法、セッティスに代表される図像学的方法、ブライソンらに代表されるニュー・アート・ヒストリーの方法、ゴンブリッチ以降の芸術の認知科学的研究、ブレーデカンプに代表されるヘルマン・フォン・ヘルムホルツセンターの研究者たちの方法に対象を定め、それぞれの計測法について分析した。同時に、それらの背景にある科学哲学、例えば、ポパー、クーン、ラカトシュ、カリー、ハッキング、ラトゥール等々の関連を探り、創造・発見・発明の問題、同一性認定についての問題、観察可能性に関する問題、装置の科学論の問題、これらについての科学哲学的研究が、芸術的創造性、またその計測をめぐる美学や美術史の発展と密接な関連を有していることを明らかにした。その成果の一部を、平成18年3月17日に名古屋大学で開催された、「感覚設計論国際シンポジウム」において美術史における計測」と題して発表した。なお、ベルリン、ロンドンに出張し、資料収集、調査を行った。 また、上記研究の分析の過程で、複雑系科学研究者である鈴木泰博助教授(名古屋大学大学院情報科学研究科複雑系科学専攻)から、とりわけ形態分析の手法に関する専門的知識の指導・助言を得ることが出来た。これらの成果については、平成18年度の研究に引継がれる。
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