本研究は、二つの目的を持っていた。第一は、これまでの主な芸術研究のなかから、芸術における創造性を測るのに利用してきた単位とその利点を明らかにすること、第二は、そのうち現在の科学の進展から見て新たな可能性をもつ計測方法を選定し、実際の作品解釈も交えてその有効性を明らかにすること、それを通じていわゆる文理の壁を越えたコラボレーションの可能性を開くことにあった。 この目的に鑑み、初年度(平成17年度)では、第一の目的に関わる研究を行い、芸術作品に対して実際に計測を行う今日の技術調査と従来の美術研究を対比した論文「芸術作品の科学的調査は作者の意図を更新することに終わるのか?」、ならびに、芸術作品の研究が当該作品に対する類似性のマトリクスをもとに行われていることを意識化した論文「Measurements in Art History」を発表した。 最終年度(平成18年度)は、第二の目的に添って研究を行った。この類似性概念の由来と可能性を、分析美学とその背景にある科学哲学の観点から論じた発表(美学会西部会)「類似概念の実効性」を行い、現在の科学的水準を考えた場合、創造性の概念そのものを変更する必要があることを論じた。以上をふまえ、名古屋大学大学院情報科学研究科鈴木泰博准教授(計算機科学)、木田洋子氏らの支援を受け、類似性を単位とする作品の系統作成を通じ、創造性を被複製能力として測定する可能性を模索する研究を行い、その成果を「画像の計測」として口頭発表した(映像学会中部支部会)。 また、鈴木泰博准教授、茂登山清文准教授(情報デザイン)との協働で、視覚と触覚の相互作用を利用した「感覚設計」に関わる発表を、スロベニアで開催された国際学会(地中海美学会)で行った。発表は投稿後、論文として採択され、平成19年度に公刊されることが決定している。(そのため18年度雑誌論文の欄には記載されておりません。)
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