本研究は、二つの目的を持っていた。第一は、先行研究が芸術作品における創造性を測るのに利用してきた単位とその利点を明らかにすること、第二は、情報科学者と協働可能な新たな計測方法を選定し、作品解釈に適用してその効果を明らかにすることにあった。 初年度(17年度)では、第一の目的に専念する研究を行い、論文「芸術作品の科学的調査は作者の意図を更新することに終わるのか?」ならびに「Measurements in Art History」を発表した。前者でわたしは、芸術作品に対して実際に計測を行う今日の技術調査と従来の美術研究を対比しその乖離を指摘した。後者では、美術史研究者が、芸術作品の計測の際、あるマトリクス(これを類似性のマトリクスと呼ぶ)を暗に用いていることを明らかにした。 最終年度(18年度)は、第二の目的に焦点を絞った。まず、美学会西部会において、「類似概念の実効性」と題する発表を行った(美学会)。そのなかでわたしは、創造性概念の歴史的変遷と類似概念の可能性を、分析美学と科学哲学の観点から論じた。最後にわたしは、科学との協働のためには、創造性概念そのものを変更する必要があることを提案した。以上をふまえ、名古屋大学大学院情報科学研究科鈴木泰博准教授(計算機科学)、木田洋子氏と協働し、類似性に基づく芸術的系統の作成を通じ、芸術的創造性を被複製能力として測定する可能性に関する研究を行い、その成果を「画像の計測」として口頭発表した(日本映像学会中部支部)。 また、鈴木准教授、茂登山清文准教授(情報デザイン)との協働で、視覚と触覚の相互作用を利用した「滅覚設計」に関わる発表を、スロベニアで開催された国際学会(地中海美学会)で行った。発表は投稿後、論文として採択され、19年度に公刊されることが決定している。(採択後の作業が進んでおらず、ページ数等が記載できないため、空欄となっています。)
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