課題に関わる18年度の研究実績について以下に概略を記す。 予定していた海外調査は、先方の都合によって次年度に回し、その分を国内調査と既存データ整理に振り替えて実行した。 国内調査は、京都・大阪の近畿圏を中心としたが、その他に関東圏の調査2件、中国圏の調査1件、四国圏の調査1件を行った。関東圏の調査では、作品の新規図像データ収集以外に、文献や写真資料の収集も行った。中国圏の調査では、古い図録に掲載されているがすでに行方のわからなくなっていた複数の作品を再発見することができた。四国圏の調査では、目的の近世初期の風俗画以外に、同時代の中国風人物の風俗表現にカブキモノの余影を見る作品に出会った。物語図像だけではなく、故事人物図や仏教図像の中にも、カブキモノの姿型の祖本がある可能性を考える端緒となるものである。近畿圏の調査では、ほぼ既知の作品の追加調査が多かったが、中国圏の調査と同様に所在不明となっていた作品を複数見出すことができ、またその間に他の地域における所在情報をかなり得ることができた。その結果、次年度は北米中心の海外調査以外に、中京圏と関東圏の作品調査があらたに必要であることが判明した。 データ整理の方は、昨年活躍したPCに強い学部生が就職活動および卒業論文執筆の年であったので、主として2名の院生を指導しながら進めた。その中の1人は学会発表と論文執筆を控えていたが、それ以外の時間を友好に使って協力してもらった。昨年から進めている(2)既撮スライドのデジタル・データ化は、本来の分量が多く、新規撮影のデジタル・データの整理に追われたこともあって、十分な進展をみなかった。来年度は早々にこれを重点的に進める必要がある。ただ、(1)図録所載図版のデジタル・データ化、(3)解説や付属資料のテキスト・データ化、(4)詞書など画中文字のテキスト・データ化は、ほぼ終えることができた。 今年度は、主に国内調査を進めながら、最終年度である来年度の調査とデータ整理作業の見通しを立て、報告書作成に向けての計画をほぼ整えることができたと思う。
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