研究課題
基盤研究(C)
本年度は、フランドル文化との接点からイタリアでもっとも早く風俗画が発生したロンバルディアの美術について調査した。関連資料を収集し、最近の研究成果を吸収した。具体的には、ロンバルディア風俗画の中心人物であるクレモナのヴィンチェンツォ・カンピによる一連の市場風俗画についての最新の展覧会カタログや研究論文などの資料を集め、その注文主や機能について考察した。また、大阪市美術館と千葉市立美術館で開催された「ミラノ展」の学術監修を委嘱されたことから、ブレラ美術館やポルディ・ペッツォーリ美術館など、ミラノの諸美術館に所蔵される作品について調査することができ、また打ち合わせや展示のために来日したミラノの文化財局・美術館の美術史研究者たちから多くの教示を得ることができ、意見交換の場をもつことができた。展覧会出品作にも、ヴィンチェンツォ・カンピの《果物売り》やジュゼッペ・アルチンボルドの作品のコピー、ジャコモ・チェルーティの作品など貴重な作品がいくつも含まれていたので、それらを仔細に観察し、調査研究することができた。こうした成果の一旦を論文「聖俗の食卓-レオナルドからチェルーティまで」として展覧会カタログに執筆し、また大阪市美術館における講演会「ミラノ美術の魅力-ルネサンスから現代まで」と題して一般に披瀝した。また、これらの調査とは別に、美術史における回顧的記述と回顧的展覧会がいかなる条件の下に生じ、発展するかについて、主に近世イタリアと近代日本を例に考察した論文「美術史における回顧」を明治美術学会の学会誌に発表した。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
『ミラノ展』カタログ(大阪市立美術館, 千葉市美術館編, 読売新聞社発行)
ページ: 20-22
近代画説 14
ページ: 35-45