本年度は、イタリアにおける風俗画と静物画の先駆者である画家カラヴァッジョについて新資料を調査し、さらに前年度にひきつづき、彼とフランドル文化との接点からイタリアでもっとも早く風俗画が発生したロンバルディアの美術について調査した。関連資料を収集し、最近の研究成果を吸収した。具体的には、カラヴァッジョの師であるシモーネ・ペテルツァーノの作品や、ミラノ派の淵源となったレオナルド・ダ・ヴィンチとレオナルド派の静物表現、また、ロンバルディア風俗画の中心人物であるヴィンチェンツォ・カンピによる一連の市場風俗画について、最新の展覧会カタログや研究論文などの資料を集め、その様式や図像、注文主や機能などについて考察した。こうした調査研究の成果をふまえ、論文「レオナルドの鉱脈-ミラノ派からカラヴァッジョまで」をまとめ、新たに判明した事実と考察をまとめて著書『カラヴァッジョへの旅』に詳述した。
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