6世紀後半に北イタリアで成立した風俗画が、いかにして成立し、普及したかを研究した。フランドルの影響の強いロンバルディア地方において、アールツェンやブーケラールの作品が重要されていたこと、それを模したヴィンチェンツォ・カンピらの活動が重要であった。一方、15世紀から16世紀初頭にミラノに滞在したレオナルド・ダ・ヴィンチの写実的な自然描写がレオナルド派の画家たちによって延命し、16世紀半ばにフィジーノやペテルツァーノに模倣され、それが若きカラヴァッジョにつながるという系譜をあきらかにした。かくしてフランドルの風俗画とレオナルドの自然描写のふたつが交錯した地点に初期風俗画が成立し、カラヴァッジョによってローマに伝播したという結論に達した。
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