平成17年度の調査として以下の作品の実地調査を行い、それぞれ新知見を得た。 1、石川県珠洲市白山神社・男神像1躯 近年発見され「平安時代」として珠洲市指定文化財に指定された。マツの一材製丸彫り像。神像の素材としてマツは珍しく、地元での製作と思われる。調査の結果、10世紀に遡る優品であることを確認した。10世紀の神像の遺品は比較的珍しい。また坐法としては跪坐であるが背面には足裏がみえず仏教の跪坐ではない。 2、石川県珠洲市須須神社・男神像5躯(重文) 調査が許可されず、目視による観察を行った。各像とも脚部が欠失しているために坐法は不明と思われたが、1躯の背面に足先らしいものが表されており、したがって跪坐像であることが確認できた。また形式的にはなっているが3躯の背面腰上に三角状の衣端が表されており服制上、今後の課題となった。また、顔の向きは5躯のうち2躯は正面、2躯は左方、1躯は右向きであり、群像表現となっておりその意味の解明も課題となった。 3、富山県高岡市二上射水神社・男神像1躯(重文) 両手が欠失しているため手勢の指摘がなされてこなかったが、実地調査によって両手はそれぞれ跪坐する膝の上に置いていたことが確認できた。珍しい形であるが、先行例として滋賀・竹田神社男神像(重文、9世紀)がある。 4、奈良大和文華館・女神像1躯 素材はヒノキとされてきたがカヤと判断した。木芯を含んだ丸彫り。衣は左衽とするが左衽は服制としては認められていないが遺品には見られる。神像と服制を考える場合の素材のひとつといえよう。左手は袖をたくし上げて持物をとる珍しい形式であり、その根拠、意味を考察する必要がある。右手は膝上で掌を前に向けて置く与願印のような形であるが、今までは触地印のように手の甲を前に向けるとされてきた。この印相の解釈も課題となった。坐法は左脚を立て右脚を横に倒すものであるが両足を付けていることも確認できた。滋賀・小津神社・女神像や滋賀・金勝寺・女神像と同様である。 以上、研究目的に即して各像の坐法、手勢、服制を調査、確認し新知見を得た。今後も調査を続け、更なる検討材料の収集に努めたい。
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