平成20年度は研究の最終年度として前年度までの調査に関する若干の補完調査を行うとともに、本研究のまとめの報告書を作成した。報告書はA4判、130ページ。巻頭に研究の総説として「調査の成果と課題」を記述し、その後に具体的な「調査報告」として仏像、神像47件の調書、図、写真を掲載した。「調査の成果と課題」においては本研究の目的である「身体儀礼」の観点から以下の4点について論述した。 1、俗形男神像の坐法について:初期の男神像の坐法に結跏趺坐があるがそれは中央の神社の像だけではなく地方の神社では平安時代中期・10世紀まで行なわれていた。ただし儀礼としての結跏趺坐の意味については意識が薄らいでいたようである。 2、女神像の坐法について:女神像の坐像として片膝を立てその膝の上に手を置く坐法があるが、今回の調査では男神像でその坐法を示すものが見つかった。その意味の解明は今後の重要な問題である。 3、僧形八幡神像の手勢について:平安時代の僧形八幡神像は独尊像と三尊像があるが、それらには相貌の相違、左右の手勢の相違が指摘できるようである。また三尊像の場合は左右の手の高さで2種の系統に分類できるようである。ただし薬師寺像の手勢は類例のないものである。 4、立像神像について:立像神像は数は少ないものの平安時代の遺品は存在する。そのうち直立して拱手するものはいわゆる「立礼」形と考えて明確に「儀礼」を示すものと理解できるが、それ以外の形態のものも指摘できた。竹林寺僧形立像、男神立像はその例である。それぞれの手勢の解明は今後の問題であるが、神像の意味の広がりを期待させるものである。
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