研究課題
本年度は、雑誌『Musicorum2007-2008』に掲載するための論文の執筆を主要目的として研究活動を行った。平成17年度に行った資料の収集、読解、共同研究者との打ち合わせ、平成18年度に参加したフランス、ノルマンディーでの国際会議で得られた情報、問題点、共同研究者とのディスカッションの成果などを総合的に集約して、シャバノンの音楽論をデーマとした研究を進めた。その結果、シャバノンの音楽論と古典派の音楽との関係、フランスとドイツとの音楽思想の影響関係に焦点を定めて論文を執筆し、学術雑誌『Musicorum』に掲載された。音楽史の観点からは、古典派の音楽の誕生の時期として重要な18世紀後期に位置するシャバノンが、いち早くその方向性を見定め、理論化していることを「性格(caractere)」の概念に注目して明らかにした。それによって、その後ドイツの古典派の音楽思想で取り上げられる「性格論」の先駆者としてシャバノンを位置づけることが可能になった。具体的な論文名は、以下の研究成果の雑誌論文の欄に記載する。雑誌『Musicorum2007-2008』は、トゥール大学のケタン教授とモントリオール大学のゲルタン教授の責任編集になるもので、シャバノンに関する国際的・学際的な研究プロジェクトに基づく総合的な研究の成果である。シャバノンは18世紀フランスの最も重要な音楽思想家の一人であるにもかかわらず、このような研究はこれまで実現されなかった。18世紀音楽思想研究の充実という観点からも、その重要性は大きい。また、今回の研究では、狭く音楽思想に限定せず、当時の哲学者、文化人、外交官などとシャバノンの関係にも視野を広げ、フランスのみならずヨーロッパのそのほかの国々との関係をも考慮している。このように、18世紀のヨーロッパの思想のコスモポリタン的な性格を明らかにいた点にも意義が認められる。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Musicorum2007-2008, Universite FranCois-Rabelais, Imprimerie de l'Universite de Tours 6
ページ: 279-290