研究課題
基盤研究(C)
本研究は、中国四川地域の仏教美術について、特に唐宋時代間の関係資史料を収集整理して基礎的考察を加えることを目的としたもので、平成17年度には主に地蔵菩薩を、また平成18年度には毘沙門天、千手観音を中心的に取り上げた。いずれも歴史地理的位置付けに留意し、この地域での動向が王朝の中央や他地域とどのような関係性にあったか、また四川地域内での関係性の如何について吟味した。これらの尊種の造像や信仰は四川地域に限るものではないが、当地での流行の状況は他所とは様相を異にする点が認められ、四川の地域性を読み解く有効な材料となり得るとの感触を得た。地蔵菩薩については、『大足石刻銘文録』をはじめとする造像題記類から関係史料を収集し、北宋常謹撰『地蔵菩薩像霊験記』所収記事の分析をおこなうとともに、現地調査で取得した実作例の記録資料と既出の報告書から抽出した資料を整理して考察を加えた。文献史料に見られる在来の地獄十王信仰との習合だけでなく、実作例には独尊像、地蔵・観音並列像、地蔵・観音・阿弥陀の組合わせ、地蔵・観音・薬師如来の組合わせ、変相図的構成の寵など豊富なバリエイションの流行が認められ、それらの作例から8世紀から11世紀に至る地蔵信仰の展開を跡付けることができるとともに、四川地域内での地域的偏差も確認できた。毘沙門天については大島幸代氏の研究協力を得、成都宝暦寺の天王像関係史料や資中西岩摩崖造像題記をはじめとする諸史料の収集と読解を通して、吐蕃や南詔との境界に位置する四川地域において歴代の節度使が毘沙門天の造像・信仰の流行に大きく関与した実態を明らかにすることができた。千手観音信仰については羅翠拘氏の研究協力を得て、小林太市郎の古典的研究を出発点としながら、それには洩れていた造像題記などの史料を網羅的に博捜し、併せて現地調査などを通して得られた実作例の資料を集成した。
すべて 2007 2006 2005
すべて 雑誌論文 (8件)
仏教美術からみた四川地域(奈良美術研究所編)(雄山閣)(総325頁)
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The Research Institute of NARA BIJUTSU, "The Sichuan Region as Seen in Buddhist Art"(YUZANKAKU)
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Waseda University the Research Center for Enhancing Local Cultures in Asia, " To Develop a Construct of Asian Regional Cultural Studies"(YUZANKAKU)
中国重慶大足石刻国際学術研討会論文匯編 2
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Anthology of Papers of the International Academic Conference on the Rock Carvings of DAZU, Chongqing, China Vol.2
Bulletin of the Graduate Division of Letters, Art and Sciences of Waseda University Vol.51-3