2005年8月31日から9月21日までフランス・パリおよびイギリス・オックスフォードにて「中国民衆本、とくに語り物刊本の音楽学的調査」を実施した。図書館訪問日程と主要な資料名は下記のとおり。 9月1日〜2日 フランス国立図書館(とくにリシュリュー館) 9月6日〜10日 イギリス・オックスフォード大学Bodleian Library 9月13日 College de France(仏蘭西学院漢学研究所 書庫見学)、l'INALCO 漢籍所蔵目録検索 9月15日 パリ市内その他の図書館 目録のみ閲覧 9月19日 フランス国立図書館にてフォトコピー(「弾詞」木刻本)の手続き 今回の文献調査でもっとも収穫があったのはオックスフォード大学のBodleian図書館である。この図書館の書庫にはおよそ450冊からなる廈門および台湾で出版された流行歌(ないし語り物)の歌詞本が所蔵されている。これまでに研究者が調査したことがないというこの資料を、とりあえず全体に眼を通し、装丁、表紙テキストなどで特記する点があるものについてはマイクロフィルムを請求した。およそ1ヶ月後にはマイクロフィルムが到着し、現在、コンピュータで読み取れる形に変換作業をおこなっている。フランス・パリでは予想していたような大量の資料こそ見つからなかったものの、『弾詞』木刻本などは今後、中国や台湾で同じ刊本が所蔵されているのかどうかを調べる必要がある。今後の課題としては、ひきつづき欧州でのこの種の資料の所蔵図書館を調査すると同時に、今回見つかった『Minnan Geci』(図書館司書がつけた総称)がいったいどのような音楽・芸能ジャンルの脚本であったのかを、廈門、台湾の語り物芸能を中心に調べる必要がある。
|