昨年、初年度は欧州、フランスとイギリスにて「欧州における曲芸(語り物芸能)刊本」の所蔵調査をおこなった。 その成果をうけて、今年度は、台湾と中国国内地方都市に調査地をしぼって調査を行った。 調査地として選んだのは、湖南省長沙市およびその周辺都市である。湖南省図書館古籍部門には数多くの芸能刊本が所蔵されていた。目録および一部刊本はコピーすることができたので、その所蔵本の全容が明らかになった。北京や上海などで清末民初にそのような民衆本を出版していた書局が数多く存在することはすでにわかっていたが、今回は地方都市の書局が出した民衆本について、その様相が少しずつではあるが明らかになった。 また、初年度(2005年)にオックスフォード大学ボドレイアン図書館で調査した廈門および台湾で刊行された曲芸刊本のコレクション(およそ450冊)に重複する内容をもつコレクションが台北市の傅斯年図書館に存在することが判明した。 実際に当該図書館の書庫から出してもらえたものが115種類であった。そのなかのすくなくとも2冊はボドレイアンと全く同じ版本であり、同図書館が所蔵する「〓南歌仔Minnan Gezai」の一部がまぎれもなくボドレイアンと重なるコレクションであることが確認できた。 詳細な分析を急ぎ、来年度の海外調査の焦点をしぼっていくことが課題となった。 調査期間と対象地 2006年8月4日〜18日(15日間)調査地:中国湖南省長沙市と周辺都市 清代から民国時代に出版された曲芸(語り物)および芸能刊本調査 2006年9月20日〜23日(4日間)調査地:台湾台北市 台湾国立中央研究院傅斯年図書館所蔵の曲芸(語り物芸能)刊本調査
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