研究概要 |
2007年7月15日から21日までロシア、サンクト・ペテルブルク、ロシア科学アカデミー東洋学研究所ペテルブルク支所(Sankt-PeterburgskiiFilial, Institut Vostkovedenfya, Rossiiskaya Akademiya vauk)連絡先:14 Dobrolyubov St.197198.Sankt-Peterburg Russiatel.にて「中国民衆本、とくに語り物刊本の音楽学的調査」を実施した。図書館訪問日程と主要な資料名は下記のとおり。 7月15日関西空港発ヘルシンキ経由St.Peterburgに到着。 7月16日ロシア科学アカデミー東洋学研究所、図書館にてあらかじめ日本国内(京都大学)で入手しておいた古籍カタログをもとに、曲芸刊本を閲覧。他に、カード検索をおこなう。 7月17日司書のはからいで書庫を見せていただく。夕刻より人類学博物館を見学、博物館の元館長を訪問。 7月18日ロシア国家図書館で入館手続き。午後からアジア分館を訪問。直接、書庫と個人コレクションのコーナーを見せていただく。小説以外に関係する刊本は見あたらなかった。司書から蔵書についての情報を入手。 今回の文献調査でもっとも収穫があったのは、カタログでは書名しかわからなかった説唱(語り物)の脚本、しかも年代の古い、清代の木刻本を直接閲覧できたことである。あるものには正式な所有印が押されており、収集者の名前が明確に読み取れた。この名前をもとに収集年代が特定できるはずである。一昨年来、オックスフォード大学のBodleian図書館や台北の中央研究院などで、大型の曲芸刊本コレクションを見てきたが、それらは欧米人東洋学者による個人コレクションであり、今回もまた、ロシアの個人コレクションのなかに木刻の説唱刊本が含まれていた。来歴のはっきりした、保存状態の良い刊本を目にしたことで、「民衆本は個人の収集から国家や大学の図書館に寄贈され、古籍としてきわめて厳重に保存管理されている」ことがわかった。今回の木刻本が中国やその他のすでにしられている刊本目録のなかにあるのか、あるいはそうでないのかを調べることと、収集者がどういう人物で、中国滞在の詳しい経緯と年代を調べることが課題として残っている。
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