研究課題について、平成18年度は、昨年度に引き続き、主に、星曼荼羅の諸尊配置の構成原理を解明する基礎作業として、各種星宿図(北斗曼荼羅のほか熾盛光曼荼羅などを含む)の現存作例の図像比較をおこない、既存の画像データを用いたデータベースの構築に向けてデータ入力を継続した。 また、星曼荼羅の成立問題を解明するための基礎作業として、古代ギリシア・西アジアならびにインドの古天文学の特質を考察し、関連資料の調査・撮影をおこなった。 古代ギリシアの古天文学については、代表的遺跡であるアクロポリスを中心に国立考古学博物館などの所蔵品も含めて神殿建築と神像彫刻・浮彫および方位と古天文学との関係を取り上げ、その伝播と中世イスラムの天文学の発達については、トルコのイスタンブール市街のイスラム建築やトプカプ宮殿などの所蔵品との関係を考察した。インドにおける古天文学の知識は、コナーラクの太陽寺院ほか多くのヒンドゥー教寺院に示されており、それら寺院の内外に残されたナヴァグラハの彫刻・浮彫はインド占星術の特質を示す顕著な遺例である。これら多様な東西の古天文学の知識、特に数理天文学との比較という観点から、星曼荼羅の成立について考察した。これらの具体的な解明については、継続的調査を踏まえて進める。 星曼荼羅は仏教(密教)美術の一ジャンルであるが、言うまでもなく信仰の対象として制作された。代表的遺例のうち、調査ならびに写真撮影の許可を未だ得ることができない作品も多い。これらの作品については、調査ならびに写真撮影の許可が得られるよう引き続き所蔵寺院への交渉をおこなう。
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