研究課題
本研究は、日本において大学および学界的に制度化された学問としての美学とは別に、そのような講壇的美学以外の領域ないし学問分野において展開された美学の史的発展を研究主題とする。具体的には主に、岡崎義恵によって構想され展開された日本文芸学についての研究をおこなう。それゆえに、本年度(平成17年度)においては、岡崎義恵の文芸学の構想の学問史的・学界周辺的状況の確認が主たる研究課題であった。その成果は以下のように整理される。1、明治期における、それ以前の国学から国文学への学問的発展(国学の近代化)における芳賀矢一の位置と功績を明らかにした。すなわち、東京大学国文学研究室は先駆的に国文学を学問として定立するが、和漢文学科、和文学科、そして国文学科へと名称変更しながら内実も整理していく際に、芳賀矢一によって文献学を自覚的方法として、学問的な科学性を高める国文学が定着した。2、人文学分野においても圧倒的な洋学の輸入と修得という学界一般の状況の中にあって、国文学の内部から、国民的自覚に基づく日本文芸学の構想が昭和初期より台頭してきた。3、そうした国文学者の中にあって、もっとも積極的に洋学美学の成果、すなわち美学的なドイツ文芸学を援用する方向で日本文芸学を体系的に構想したのは岡崎義恵であった。彼は国文学批判と文献学批判をふまえて、文献学的方法を超えるような、文芸の評価(美学的・芸術学的判断)にも関わりながら学問的体系性・科学性を備えた文芸学を追究する。以上の成果の概要は、口頭発表による「国(文)学への反乱-岡崎義恵の日本文芸学の構想-」(文芸学研究会第25回研究発表会、平成17年12月23日、大阪大学)という論文で報告したが、近々『神戸女学院大学研究論集』に掲載する予定である。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (1件) 図書 (1件)
DIOGENES 52・3
ページ: 13-16