研究課題
江戸時代後期の浮世絵師・勝川春章が遺した絵画作品の、総目録作成作業の一環として、2005年度はおもに関西方面(大阪府・京都府)に五度、作品調査を実施した。その内容は、申請時に報告した手元作成済みの基礎資料から脱漏していた作品と、従来未調査であった作品の実物調査を中心とし、プライヴェートコレクションのご理解・ご協力を得て、全図・部分図の撮影による原色写真と実測による法量データ、そして作品所見の各記録を、鋭意収集した。五回の調査で得た五件の春章作品から得られた記録は、調査旅行の後ただちにPCデータとして簡易整理を実施済みである(総合的な資料整理は次年度に予定)。これによって、データベースのもととなる基礎資料が補完され、次年度に作成予定の総目録の完成に大きく前進した。なおこの調査の過程で、新たに大正年間に米国ボストン美術館の収蔵品から売却されたまま行方不明になっていた春章初期の絵画作品を偶然にも再発見できたのは予定外の大きな収穫で、取り急ぎその出現報告を『出光美術館研究紀要』掲載の研究論文にておこなった。他方、春章研究の関連文献・資料の収集も通期にわたって間断なく実施し、美術史学的方法論による春章作品の様式・形式的な考察も蓄積したが、とくにその過程で得た絵師の様式形成に関する知見の一部を、構成協力に携わった米国国立スミソニアン協会フリア美術館における展覧会‘HOKUSAI'の図録作品解説にて援用することができた。さらにまた、春章の作品を含む数多くの浮世絵の絵画作品が日本国内に初めて里帰りする米国ボストン美術館の浮世絵展(監修を担当)図録でも、そこに含まれる各論や作品解説に同上の成果の一部を披露した。
すべて 2005
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出光美術館研究紀要 11号
ページ: 6, 13-25
史学雑誌 114編5号
ページ: 147-151
Hokusai and His Age : Ukiyo-e Painting, Printmaking and Book Illustration in Late Edo Japan 1
ページ: 62-75