研究課題
本研究の目的である、日本古代文学における漢語表現の実態を把握し、文学作品における漢語独自の表現性を記述することを達成するために、昨年度に引き続き、本年度も日本古代文学における漢語表現の認定作業を行った。そのさい『萬葉集』『懐風藻』の詩文・詩題・題詞・左注などにおける漢語の受容と歌語との関連、および歌の表記に用いられた漢語を和語との関係において考察することに主眼をおいた。今後の考察の基礎とすべく、以下の6つの表記・表現に分類した上でさらに検討する漢語の範囲を広げて追究した。1.漢語を訓読し、歌語として用いた例。2.漢語の本来の意味とは異なった意味で用いられた認めうる例。「所心」「縁起」など。3.漢語を受容したか否か再検討すべき例。(1)後代の例は残るものの、『萬葉集』に先立つ例が確認されていない例。もしくは確認が不十分な例。「裁作」など。(2)漢語の可能性が高いと思われるが確認されていない例。「返報」「悽惆」など。(3)漢語として受容したか、和語から造語したか見極める必要のある例。「寄物」「陳思」など。(4)和製漢語の可能性が高いと認められる例。「著接」「裁歌」など。4.歌の表記として用いられた漢語の例。「〓怜」「山斎」など。5.漢語としての用例をなお広く求める必要のある例。「感緒」など。6.修辞関係、わけても『懐風藻』における特殊な対句表現。「雲岸一霧浦」など。各項に分類された漢語について、研究支援者の協力のもと中国における用例の検索を行った。その結果に基づいて、月例の研究会において日本と中国における用法の異同の検討を繰り返し、その成果を漢語独自の表現性の記述のための資料として蓄積した。あわせて、日本上代における漢語研究の基礎資料となる、敦煌文書の書儀関連文書の複写に引き続き、さらに願文関連文書の複写を依頼し、それらの整理を行った。また、『懐風藻』の校本を作成すべく、作品テキストのデータ化を行った。
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萬葉 199号
ページ: 1-12
説話・伝承学の現在
ページ: 136-146
陶淵明 詩と酒と田園
ページ: 57-76