(1)新しくなった国文学研究資料館ホームページの『日本古典籍総合目録』を利用して、明和期の刊行書目を抽出する作業はほぼ終了した。ただ、それらを分類し、他の書目と付き合わせていく作業はなお充分とはいえない。結局は所蔵する図書館に直接赴いて書誌調査をしなければならないようであるが、平成19年度はそのための時間が充分にとれなかったので、次年度に譲らざるを得ない状況である。 (2)上記のような進捗状況と、残された研究期間が平成20年度の1年のみであることを考えると、明和期全体の書目年表を作成することはかなりむずかしいと思われる。特定の年にポイントをしぼって調査を進めていく方がより具体的な成果が得られるのではないかと考えており、目下は、前期読本の代表作と目される『雨月物語』の序文が書かれた明和五年、及び同書が刊行された安永五年というふたつの年を重点的に調査する予定でいる。 (3)明治以降の文学史記述の検討ももうひとつの大きな柱であるが、こちらに関しては『近代小説史』の著者藤岡作太郎の『自筆日記』明治三十八年分の解読を終え公刊した。日記中には『春雨物語』をはじめとする江戸文学関係の記事が数多く記されており、『近代小説史』の講義準備が進行中であったことをうかがわせる。この資料は近世文学だけでなく日本の国文学にとっても貴重な資料なので、いずれこの記と藤岡作太郎の事蹟研究をメインにした、独立した研究に発展させたいと考えている。いずれにしても、『自筆日記』の解読作業は、当面、本研究の一環として継続していくこと予定である。 (4)近世中期上方の文学者としてぬきん出た存在である上田秋成の没後200年祭に関しては、予定より1年遅れ、2010年夏に京都国立博物館で開催されることに決定した。『秋成文学の生成』はそのプレ企画として編纂した論文集であり、学会関係にひろく周知するきっかけとなった。
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