二年の研究期間のうち、一年目である平成17年度は、主として、一八六七年(明治元年)から一九四五年(終戦時)までの期間の総合雑誌・文芸雑誌・音楽雑誌等に見られる、西洋音楽およびオペラ関係の雑誌記事を、可能な限り収集した。東京の日本近代文学館や神奈川近代文学館、国立国会図書館等に出張し、所蔵雑誌について資料複写を行った。同時に、同志社大学附属図書館および大阪府立中央図書館等の近隣図書館架蔵の資料についても同様の資料収集を行った。また、近代雑誌の目録や、入手が困難な雑誌本体、また国内外の公演パンフレットなどの資料を、随時購入した。 その上で、第二年目の平成18年度にまたがり、これらの雑誌記事について、目録として著者名・記事名・掲載雑誌名・発表年月についてのデータベース化をはかり、「西洋音楽およびオペラ関係参考文献一覧」を作成した。これをインデックスとして、雑誌記事自体をも画像保存し、613タイトル(平成19年1月現在)以上の雑誌についてPDFファイル化した。これにより、デジタル上の記事集成が一応構築された。 また、西洋音楽およびオペラ関係の図書についても、書籍原本を確認できたものに限り、文献目録として整理する作業を継続した。 これらにより、日本の近代における西洋音楽の移入による文化基盤の変化について、近代文化を広い裾野で支えていたバラエティーあふれる雑誌文化の側面から明らかにするという「研究目的」を達成するための、基礎資料を、不十分ながらほぼ整えることができた。 これら雑誌記事には、現代からは見えにくくなっている、西洋文化移入のいわば偏りが見て取れる。雑誌別、また明治・大正・昭和前期の時代別、さらには、ヨーロッパの国別、オーケストラとオペラの別などに、それぞれある傾向を認めることもできた。これらについて、研究成果報告書に詳述した。
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