平成19年度は資料の充実と収集資料の分析に重点を置いて研究を進めた。 昨年度に引き続き『与論町誌』に掲載される「十五夜踊り」の詞章を撮影したビデオと比較することにより分析研究した。とくに当該年度は「奴言葉」に注目して詞章を分析した。 本年度当初に予定していた岡山大学図書館「池田家記録」と金沢市立玉川図書館「前田家記録」の調査は、鈴木博子氏(日本学術振興会特別研究員)の協力を得、鈴木氏調査の金沢市立玉川図書館所蔵の『御能方』の翻刻作業を二人の協力体制のもとに開始した。 本年度の調査は大阪府立中之島図書館と佐渡市鳥越文庫の所蔵資料を中心に実施した。7月・8月・10月・11月に大阪府立中之島図書館、9月・11月に佐渡市鳥越文庫、10月に京都府立総合資料館、11月に沖縄県立芸術大学所蔵資料の調査を行った。また12月には舞踊学会(倉敷市)で上演された白石踊りを調査した。1月・2月に予定した山口県立山口図書館と広島市立中央図書館所蔵の藩政記録の調査は、所属機関の移転等の関係から中止した。 本研究における藩政資料調査の成果を取り入れた論文「見立と歌舞伎」(『図説<見立>と<やつし>』八木書店 所収)を発表した。また関連の研究発表をヴェネツィア大学の日本文学研究会で行った。 次年度は最終年度にあたるため、本研究の成果発表としてEAJS(ヨーロッパ日本研究学会)における研究発表を計画し、パネルを申請して採択された。パネルで研究発表する「17世紀歌舞伎の笑いの演技・演出」について、先行の論文(ハワード・ヒベット、長谷川強『江戸の笑い』・荻田清『笑いの歌舞伎史』など)の調査と分析を行った。
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