(1)義満時代の基本史料刊行のための準備(小川) 前年度に引き続いて『迎陽記』を対象とし、本年度は改元記を中心に本文を整定した。京都大学附属図書館・宮内庁書陵部・筑波大学附属図書館・内閣文庫に写本調査に赴き、写真を購入し、翻刻を進めた。康安から応永まで九度にわたる改元の記をほぼ入力し終えた。足利義満の政治的意向が年号にそのまま影響したこと、また、当代の漢籍受容に関しても重要な知見を得られることが分かった。 (2)義満の政治行動(儀式・遊覧・戦争・造営)についての記録・書物の研究(小川) 前年度と同様の研究を続けた。義満の側近であった飛鳥井雅縁を取り上げ、論文「寵臣から見た足利義満」を執筆し、下記『ZEAMI』第4号に掲載した。この過程で、雅縁の義満を追悼した仮名日記『鹿苑院殿をいためる辞』の、最古写本を発見することができた。 (3)室町時代前期における仙洞・将軍家関係の芸能活動についての研究(松岡) 前年度と同様の作業を続け、講演・論文として公表した。室町将軍の意図した都市計画として、「花の都」をキーワードとして研究し、論文を下記『ZEAMI』第4号に掲載した。また、世阿弥の芸術論書を文化史的視点から再読することにも努めた。 (4)雑誌『ZEAMI』没後600年記念・足利義満特集号の編纂と刊行(松岡・小川) まず8月4日に「足利義満の文化戦略」と題して櫻井英治・高岸輝・松岡・小川4名による座談会を行った。12月2日には相国寺管長有馬頼底和尚に松岡・小川でインタビューを行った。さらに松岡・小川のほか、日本史・日本文学・宗教史研究者6名から室町幕府将軍の文化政策に関する論文を寄稿いただき、以上はすべて『ZEAMI』第4号に収録されて19年6月に森話社より刊行される。
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