1.足利義満年譜(稿)の編纂(小川) 本研究のまとめとして、義満の事蹟を細大漏らさない年譜を編纂した。項目は二千以上に及んだ。公家日記の記事を精読することで、政治・文化的業績とその意味を明らかにすることに努めた。禅僧の語録文集にも重要な史料を見出すべく、『五山文学新集』など史料集刊本も購入した。 2.義満文化圏の構成と活動についての研究(小川) 義満のもとでは公家・武家・禅僧の一堂に会する雅会がしばしば開催されたが、紐帯となったのは和漢聯句であった。この頃から作品も残存する。そこで至徳三年(一三八六)張行と推定される和漢聯句百韻を取り上げ、「南北朝の政治と文化-二条良基と足利義満の和漢聯句」と題して国文学研究資料館にて講演し、冊子にまとめた。和漢聯句を当代の学問史・文化史の史料として大いに活用することができることが明らかになった。 3.室町時代前期における仙洞・将軍家関係の芸能活動についての研究(松岡) 前年度と同様の作業を続け、とりわけ観世文庫の調査を通じて新たに得た知見を基にして、世阿弥の芸術論書に新たな文化史的視点を取り入れた分析を試みた。 4.報告書の編纂(小川) 以上の研究成果の一部は、既に雑誌『ZEAMI』第4号に収録、刊行されているが、三年間の成果を踏まえて報告書をまとめた。すなわち論文編、新たに執筆した論文「迎陽記の諸本研究」と康暦元年から応永八年までの日記の翻刻、足利義満年譜(稿)の三部構成である。但し紙数の関係上、収録は研究成果のごく一部にとどまる。
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