研究概要 |
平成17年度は、19世紀の中盤に活躍した、詩人のヘンリー・ワズワース・ロングフェローとコーラス・バンドのハッチンソン・ファミリーを中心に研究をおこなった。 ハッチンソン・ファミリーは1840年代から、メンバーを変えながら1880年代まで、バラッドや家庭歌謡、社会改革の歌などをうたって、いわゆる「シンギング・ファミリー」の流行を導いた。アメリカ大衆音楽研究では、その活躍が深く追求されてこなかったバンドだが、興味深いことに、彼らはロングフェローやホイッティアの詩にメロディを付してうたっていた。 そこで、19世紀のアメリカ大衆音楽全体の動きに注意しながら、まずハッチンソン・ファミリーの足跡を一次資料を使って辿った。そして、とくにロングフェローの詩「イクセルシオ」にメロディを付した「イクセルシオ」がどのような歌であったのか、具体的に分析してみた。 その結果、歌「イクセルシオ」はメロディよりも詩を重視した歌だったことが明らかになった。きわめて素朴な旋律が付せられていて、「単調」な「詠唱」という評価もあったくらいだった。けれども面白いことに、この歌は当時のアメリカやイギリスで広く歓迎されていた。すなわち19世紀中期には、メロディやリズムよりも詩を重視した歌があって、それが受け入れられていたのである。大衆詩という文学が広く受け入れられた当時は,音楽の分野でも詩が大きな位置を占めていたのである。 なお、ここまでの研究は、すでに本年度中に論文にまとめて発表した。
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