1.2006年4月からフィールドワークに出かける2006年12月半ばまでは、前年度末に調査にでかけたレユニオン島から持ち帰った文献資料・映像資料をリサーチ・アシスタントを使って整理し、文献の解読につとめた。とくにレユニオン・クレオールの音声資料を分析し、ゼミナールで院生たちに紹介した。 2.2005年12月16日から2006年1月6日の期間、インド洋の南半球にあるモーリシャス島(独立共和国)とレユニオン島(フランス海外県)へ現地調査に出かけた。 (1)モーリシャス島:クレオール語を共和国の国語の地位に高めようという運動に長くたずさわり、自らクレオール語で物語や劇を書き、シェイクスピア劇をモーリシャス・クレオール語に翻訳しているデヴ・ヴィラソミー氏と対談して多くを学んだ。ついで南アからの移住者であり、英語表現の小説家としても数々の賞に輝くリンゼー・コレン女史と面談した。女史には、クレオール語を通して、女性の社会問題に取り組む姿勢が顕著にみられた。その他、クレオール語言語学者で、最新のモーリシャス・クレオール語の辞書を編纂しているアルノー・カルポラン氏をモーリシャス大学内の研究室に訪れ、話を聞いた。 (2)レユニオン島:小説家のアクセル・ゴーヴァン氏、クレオール語擁護運動家ローランス・ダロー女史、詩人で音楽家や美術家たちとのコラボレーションによってユニークなプロモーション活動をしているパトリス・トゥルタール氏、中国系でレユニオン民話を採集し、クレオール語で多数の著作を発表しているダニエル・オノレ氏と会談、レユニオン島の言語状況についての知見を深めた。レユニオン島は海外県なので、モーリシャス島のようなクレオール語の国語化の運動はみられないが、文化多様性の観点からさまざまな活動がなされている。
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