今年度は、C.P.GilmanのHerlandおよびEdward BellamyのLooking Backwardをテクストにして、闘争の終焉というユートピア的テーマについて大学院で授業をしながら、さらにそのテーマとダーウィニズムとの関連を検証するために、ダーウィニズム、アメリカにおける社会ダーウィニズムについて研究を進めた。 With Her in Ourlandについては、オリジナルのテクストにまで遡りながら、Herlandに見られる、性別間の闘争の終焉にたいするアンビヴァレントな態度が、その続編であるWith Her in Ourlandのなかで具体的にどのように展開されているかを追求した。女だけのユートピアが男女両性の世界に解消していくテーマの展開(ユートピアの不可能性のひとつのかたち)を、ギルマンのフェミニズム思想全体のなかで解釈しようとした。 Edwad BellamyのLooking Backwardのなかで見られる階級間の闘争の終焉というテーマについては、その作品への反論として書かれたWilliam MorrisのNews from Nowhereを読解しながら、ベラミとモリスとのあいだの相違と類似を中心に研究した。モリスの中世主義的ユートピアが、ベラミの産業主義的あるいは国家共産主義的ユートピアのどこを批判しているかを検討した。 最終年度である来年度は、世紀末に見られるユートピアの不可能性というテーマが、じつはスティーヴン・グリーンブラットがトマス・モアのなかに指摘しているユートピアの不可能性というテーマを反復しているという前提から出発して、ユートピア文学のなかでの世紀末ユートピアの特徴をあきらかにしていきたい。
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