1.ホイッグを中心としたイギリス政治体制について研究を進めた。 穏健派リーダーCharles James Foxの著作を研究する中で、彼が政治理念として「人民の友」、「平和主義」、「自由主義」を掲げていることが判明した。ただ、彼には矛盾があった。彼はアイルランドにおけるカトリック教徒解放には、民主主義的態度を示している。しかし、彼は結局、同国にイングランドと同等の政治的地位を与えることには反対している。Byronの国会演説を分析し、彼がFoxと同じ立場をアイルランドに対して取っていることが判明した。Byronと比べ、John Cam Hobhouseは急進的な政治的立場を維持している。 同じことは、Francis Burdett、John Cartwright、Thomas Erskineにも言える。彼らはホイッグと同じ主張を唱えつつ、具体的な民主的改革を進めている。Byronがイタリア革命やギリシア解放という大規模な民主化運動に関わりつつ、ホイッグの急進派より貴族的であることは興味深い。 2.Byronの詩のホイッグ・リベラリズム的傾向について、The Islandを取り上げて研究した。大英帝国の軍艦、Bounty号における反乱の実態とByronのそれへの反応を検討した。反乱後の裁判、乗組員たちの証言、Bligh艦長の著作等から、帝国主義とリベラリズムのぶつかり合いがその事件の背後にあったことが判明した。Byronはこの詩で帝国主義を批判しつつも、その批判的態度をロマン的かつ内省的傾向の導入により弛めている。ホイッグ・リベラリズムは貴族主義と民主主義の融合を特徴とし、特に支配階級にとって弱者たる民衆への保護義務と支配願望を同時に満たすものである。ByronのThe Islandでも、そのホイッグ・リベラリズムの特徴があることを論文にした。
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