ホイッグを中心としたイギリス政治体制について研究を進めた。摂政政治時代にホイッグを牛耳ったCharles James Foxが紳士的な政治理念である「人民の友」、「平和主義」、「自由主義」を掲げつつも、アイルランドがイングランドと同等の経済的な立場に立つことに反対していることがわかった。Byronの3回の国会演説を分析し、彼が基本的にFoxと同じ政治的姿勢を取っていることがわかった。彼のフレーム・ブレーカーに対する擁護は温情主義にすぎず、カトリック教徒解放の訴えは具体的方策を謳ったものではない。演説全体が美辞麗句を並べた、弱者に対する保護を訴えた内容にすぎない。つまり、騎士道的な弱者保護の姿勢が彼の政治姿勢の根底にあることがわかってきた。Byronと比較して、彼の政治的指南役であるHolland卿の方が、カトリック教徒解放に関してはより急進的である。また、Byronの盟友John Cam Hobhouseは一貫して国会改革という、具体的にイギリス政治体制を変える政策を訴えている。Hobhouseの友人たちであるFrancis Burdett、 John Cartwright、 Thomas Erskineらも国会改革の要求では一致している。彼らは基盤としてはホイッグと同じ主張を唱えつつも、具体的な民主的改革では一歩先んじている急進派なのだ。Byronがイタリア革命やギリシア解放という大規模な民主化運動に関わりつつも、具体的な政治改革には二の足を踏んでいることは、彼が結局はEdmund Burke的な騎士道精神に固執しているのではないかというところまで研究を進めた。
|