研究概要 |
本年度は、研究成果として「ロンサールにおける木蔦lierre-クーマエの巫女と木蔦の愛のメッセージ-」1編の論文を発表した。 ロンサールには愛のメッセージ伝達の媒体として木蔦lierreを利用している例があるが、この使用例には古典作品におけるクーマエの巫女の逸話との関連が認められる。しかし古代作品で利用されるのは単なる「葉」であり、メッセージも運命に関する物であり、両者の関係ははっきりしない。本年度は、まず古典作品からクーマエの巫女に関する逸話、木蔦さらに木蔦と同様な使い方をされる葡萄の葉に関する約200の用例を詳細に検討した。さらにロンサールの全作品に関しても同様な調査を行い、木蔦の葉を愛のメッセージに使用する例はロンサールにのみ現れることを示した。さらにロンサールの用例がマリー、カッサンドルの両者に関連する可能性があることを踏まえ、この独特の使用法が、クーマエの巫女の逸話と恋人カッサンドルと重ね合わされたトロイア王の娘カッサンドラとの組み合わせから生まれた可能性を指摘した。また、研究の途中で明らかになったローモニエ版、プレイヤード版の一部の注釈について補うべき部分を以下のように指摘した。★1.T7,p.175,sonnet LVIII, v.13,《amour est fin》,voir Clement Marot, L'adolescence clementine, Troisiesme Elegie en forme d'Epistre, Quand j'entreprins t'escripre, v.65:《Amour est fin, et sa parole farde》.★2.T7,p.177,la note 1 de l'ed. Laumonier renvoie auxdeux passages de Virgile et d'Ovide qui ne donnent pourtant aucun renseignement sur la feuille delierre utilisee pour transmettre un message d'amour.★3.T7,p.175,sonnet LVIII, v.9,sur la Sibyllede Cumee voir aussi Ovide, Me'tamorphoses, XIV, v.106-113.★4.T17,p.74,v.212-219,voir Catulle, Carmina, 61,v.34-35.★5.T12, p.157,v.177-180,voir Virgile, Bucoliques, VII, v.25. ★6.T12,p.63,v.381-385, voir Ovide, Me'tamorphoses, VIII, 172-177;Ovide, Fastes, III, v.481;Catullus, Carmina, LXIV,251-253.★7.T6,p.79-80,v.123-126;t13,p.81,v.92;t17,p.194, v.3;t17,p.218,v.7-8,ces troispassages sont munis de renvois au Virgile, Georg.I,2:《Ulmis adjungere vites》mais la significationde la phrase chez Virgile est purement agricole.
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