研究概要 |
本年度は主に"palme"を通してラテン語作品との関連を論じ,ロンサールのオリジナル性を明らかにすると共に,以下のように,既存のローモニエ版,プレイヤード版の注釈について補足,訂正すべき箇所を特定するという成果を得た。 1.T.1,p.28,v.84-85,54-73年版はウェルギリウス,『農耕詩』,II,v.425:「こうして,多くの実を結び,平和の女神に喜ばれるオリーヴを育てなさい」の影響を受けている。 2.T.1,p.28,v.86,54-73年版はウェルギリウス,『農耕詩』,II,v.67-68:「高く聳える棕櫚やいつか海難を見ることになる樅も,そこから生じる」の影響を受けている。 3.T.2,p.30,v.21:《Seme le lis, & le laurier》.ほぼ同じフレーズがL'Histoire de l'Archiduc Albert gouvemeur general et puis prince souverain de la Belgique,l'epitre dedicatoire, anonyme, Cologne,1693.にも現れていることは注目すべきである。 4.T.6,p.135,v.5:《l'Olive tarde》.ヴァッロのRerum rusticarum de agri cultura,1.41.5の影響を受けている。 5.T.7,p.51,この注3で示された節は月桂樹の使用例を与えている。 6.T.16,p.195,v.481-484 et t.8,p.45-46,767-776と関連する勝利の女神については以下に使用例を見つけることができる:アプレイウス,les Metamorphoses,II,4;ヴァッロ,De lingua latina,5,62;セルヴィウス,Commentarii in Vergilii Aeneidos,8,128,8-9;Commentarii in Vergilii Georgicon,3,102;ゲルリウス,Noctes atticae,7,6,5;マティウス,Carmina,VII,3,1;カトゥルルス,Carmina,62,12-17;マルティアリス,Epigrammata,10,50;カエサル,Bellum civile,3,105;ウィトルヴス,De artchitectura,IX,1,3-5;クラウディウス,De consulatu Stilichonis, III,v.205以降 7.T.16,p.203,v.628-636,この一節についてはカタリImagines deorum,Lyon,B.Honorat,1581,p.325-326を参照されたい。 8.T.16,p.258,v.302-312,73年版に関しては,ロードスのアポロニオスのArgonautiques,III,v.967以降に出てくるのはδρuξ(樫)やελατηιξ(形容詞:杉に似た)であり,棕櫚の話ではない. 9.T.16,p.258,note 3に関して,ローモニエ版の注で:《Vauquelin de la Fresnaye(Idil.,I)》と記されているものはおそらく《(Idil.,I,76)》とされるべきものである。 10.T.17,p.86,v25-30に関してはウェルギリウス,『農耕詩』,III,v.100-102を参照せよ。「棕櫚」が勝利の意味で使用されている。 11.プレイヤード版,I,p.1089,注2ではアプレイウスの《palmaris dea》を引用しているが,より正確には《palmaris deae facies》となるべきである。 12.プレイヤード版,II,p.792の注2が与えている出典は《Pline, Histoire naturelle, XIII, VII》へと訂正される必要がある。
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