本研究「文学批評理論としてのエコクリティシズム確立にむけての研究」2年目では、1年目のソローを中心とする研究から、エコクリティシズムの批評そのものの現状を分析し、より具体的にエコクリティシズムのキーワードとキー概念の変遷を調査し、批評実践に当たった。その際三つの段階を設定して以下のように進めていった。 1)ロレンス・ビュエルによる最新のエコクリティシズム研究書Future of Environmental Criticismをエコクリティシズム研究会で研究し、5人で協力してその邦訳に当たりつつ、巻末書誌、環境批評用語について検当を重ねた。その成果は解説とともに鶴見書店より2007年5月に同書邦訳書として出版した。序文と第1章、5章、あとがき、原稿取りまとめ、監修を伊藤が担当した。また英語青年に「ビュエルエコクリティシズム三部作の完成に寄せて」と題して、エコクリティシズムの修正主義である第二波エコクリティシズムについて考察した。 2)エコクリティシズム第二派が焦点化する、汚染の言説と環境正義のテーマについて、その批評実践として、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』を中心に考察し、アメリカ学会・学会誌の特集「自然と環境」に、「Silent Spring-Toxic Infernoを下って沈黙のジェンダー的ルーツを探る」と題する論文を掲載した。 3)ソローとカーソン以降の女性環境作家について、阪大の人文COEプロジェクト「環境と文学」第三回フォーラムに参加し、講演するとともに、英米のみならず、ドイツ文学、フランス文学での現状を把握し、プロジェクトメンバーの研究発表にふれ意見交換し、エコクリティシズムの批評制度としての可能性について考察を深めた。これらは二つの論文で、エコクリティシズム第二波の具体的な展開を試みた研究成果として発表した。
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