平成17年度 本年度は研究課題「イギリス文学における国家意識と道徳的主題の研究」において、特に宗教的要素を中心に分析した。研究代表者は1780年代から1830年代のイギリスロマン派詩人の非国教主義と政治的社会的問題との関連を歴史的コンテクストにおいて調査した。具体的には(1)S.T.コールリッジ、ウィリアム・フレンドを中心とするケンブリッジ非国教主義者の政治的宗教的言説の分析、(2)ジョージ・ダイアー、チャールズ・ラムなどの反奴隷貿易詩におけるユニテリアン要素の分析、(3)ジョゼフ・ジョンソンとジョゼフ・プリーストリを中心とする知的サークルにおける思想的連関性の分析を行った。その結果、ロマン派詩人の奴隷貿易などに関する言説にはヒューマニズムと脱中央主義的要素が複雑に影響していることが明らかになった。研究分担者は、標記の課題において、(4)17世紀〜18世紀のイギリス文学とa)社会的政治的混乱、b)宗教的葛藤、c)芸術的感覚との関連を調査した。本年度は、特に(b)及び(c)の要素を中心に考え、F.ベイコンから清教徒的倫理観に至るイギリス国民の意識の変化、及びミルトンからバークに至る芸術的感覚の変化を分析した。前者では特にピューリタニズムと社会的システム構築の関係をミルトンの思想を中心に、後者では、ベイコンの道徳的倫理的性質の継承を18世紀文学に至る系譜において捉え、考察した。これらの研究結果は次年度の学会、学会誌などで発表する予定である。
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