本年度は、十七世紀後半から十八世紀における女性作家形成の問題を、公共圏という場において考察するために、出版関係のマーケットに存在/機能する女性の位置づけ/役割に焦点を当てて、当時、急成長しつつあった出版文化をジェンダーの観点から考察した。そこで、従来、十八世紀以降に登場したとされる公共圏の形成過程を、1662年に発足する王立協会、および協会による当時の知の構築/流通状況と絡めて、再検討した。 具体的には 1.職業的女性作家誕生の場を最初に提供した演劇というジャンルに関して、上演や出版に関する一次資料から、当メディアにおける女性作家誕生の意義に対して考察を行った。特に、Aphra Behnという作家の女性というジェンダーが、どのように作品の上演/出版形態に機能していたのか更に検証を行い、王政復古期から十七世紀末にかけての男性作家/女性作家との関係性について考察し、Behnを軸とする知的ネットワークを総合的に捉えることを試みた。 2.十七・十八世紀女性作家関連/出版関係の一次資料を、米スタンフォード大学グリーン・ライブラリー等で、マイクロフィルム等から収集を行い、文学作品との関連性をたどりやすい形に分類・整理を進めた。 3.Athenian Mercuryといった十七世紀末の人気雑誌を手がかりに、公共圏の問題をジェンダーの視点から分析し、同時に、王立協会による出版戦略と、このような雑誌の出版戦略とを比較することで、出版文化の成長過程と知の形成/流通過程との関係を考察した。
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