研究課題
基盤研究(C)
本年度は、本研究計画によって開かれている研究会においては1990年以降を中心としたドイツにおける政治文化の変動のいくつかの側面について、時間的距離を置いた現在時点で改めて検討を行なった。作家マルティン・ヴァルザーの時事発言については、彼の1960年代からの政治的主張まで遡りその変遷をたどって、とりわけ<Nation>についての彼の考えの一貫性と変化の相とを確認した。また、そうした政治的姿勢と彼の作品との相関関係について追究してゆく研究も緒にもついた。戯曲家ボート・シュトラウスが90年代に発表したエセー及び作品についても、その批判的読解に取り組んだ。とりわけ所謂<ベルリンの壁崩壊>後のひとつの画期的な作品と見なされている戯曲「終合唱」がもつ政治性の射程についての討議を行なった。さらにこうした検討を踏まえて、集合的アイデンティティの枠組みとしての<ドイツ>あるいは<Nation>といった観念が、現在のドイツにあってどれだけの有効性を持ちうるかについての理論的作業を深めていった。資料収集に関しては、これまで手薄だった演劇関連のものも対象に加えた。ただし対象をひろげると膨大な量になるために、まずはベルリンにおける演劇に限定し、それも政治性の強いベルリーナ・アンサンブル及びフォルクスビューネ周辺から、政治文化と芸術との関連を探りうる資料を集めていった。個人ではとりわけ、クリストフ・シュリンゲンズィーフ及びハンス・ユルゲン・ジーバーベルクに関する資料を集中的に収集し、次年度以降の検討してゆくことにした。
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すべて 雑誌論文 (2件)
Bevorzugt beobachtet. Zum Japanbild in der zeitgenossischen Literatur. (Martin Kubaczek und Masahiko Tsuchiya (Hrsg.)) (Iudicium Verlag Munchen)
ページ: 66-78
ファスビンダー(渋谷哲也・平沢剛編集)(現代思潮新社)
ページ: 107-126