研究の初年度である17年度は、当初の計画どおり、まず、Country-House Poemsの代表的な作品とそれに関する批評書、さらに18世紀から19世紀初頭にかけてカントリー・ハウスを舞台の中心に据える小説とその研究書の文献リストを作成し、購入、解読、整理を行いながら、カントリー・ハウスをめぐる文学作品の形態と意義を、詩から小説へというジャンルの推移に焦点をあてて考察した。この資料の整理とリストの作成に学生アルバイトを利用し、またカントリー・ハウスをめぐる文学作品のあり方とその歴史的状況、あるいは詩と小説のジャンルの接触やそれらの混淆に関する幅広い専門的知識を得るために、専門とするディケンズに関する学会はもとより、ヴィクトリア朝文化研究学会や、日本ハーディー協会など、複数の学会に参加して多様な領域にわたる研究者との交流を通して専門的な知識を得るとともに、12月には学外から研究者を招いて本務校において講演会を催し、他の教員や大学院生の参加も仰ぎながら、実在のカントリー・ハウスの歴史的発展やその文化的意義に関して議論する中で、自らの知識を一層深めることを目指した。また、4月から一年間に亘って本務校で行った特殊講義「イギリス小説と邸宅」では、こうした研究の成果を交えながら、17世紀から20世紀にいたるイギリスのカントリー・ハウスをめぐる歴史的状況と、実在、架空の邸宅をテーマとするお屋敷文学の系譜を辿り、研究の全体的なパースペクティヴを形作ることに努めた。さらに、そうしたお屋敷文学をめぐる広い視野のもとに、従来専門としてきたディケンズ小説における情景描写の意味を考えた論文を二編執筆(内一編は来年度発行予定)し、来年度におけるより広い研究の土台とした。
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