本研究の最終年度にあたる平成19年度の研究目標は、平成17年度からの3年間に及ぶ研究や調査を踏まえて、戦後再定住期における日系カナダ大作家及び日系アメリカ大作家の創作活動の比較を行うことにあった。戦後再定住用を1945年から1952年までとすることで、アメリカとカナダにおける戦後の創作活動を主として、それぞれの代表的なコミュニティ新聞を通して比較検討を試みた。アメリカの場合は、主としてRafu Shimpo及びPacific Citizenの文芸欄に掲載された短編やエッセイなどを収集し、そこに見られるテーマを分析しながら、戦後の日系アメリカ人にとりコミュニティの再建や日系人としてのアイデンティティの再構築に伴う葛藤や揺らぎを特に二世に共通の問題として示されている。一方、日系カナダ人の創作活動については、日系カナダ社会の中心的な新聞であったNew Canadianの文芸欄を読み、エッセイや短編、詩などを収集し、テーマ別に整理・分類しながら戦後の日系カナダ人が強制収容というトラウマをどのように乗り越え、カナダ社会に復帰したかその過程を検討した。その結果、二世の様化及び、他人種との関係など共通点がありながらも、強制収容のあり方の差異がそれぞれの社会における日系人の状況にも影響を及ぼしていることが了解された。さらに両国の日系人再定住期の比較をさらに進めるべく、3月にはアメリカのカリフォルニア大学で二世による雑誌の調査と研究者との意見交換も行い、報告書作成の準備を進めた。
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